John Lennon 『Only People』に対する20代なりの解釈
同じ文章であっても、読む時代によって意味合いが変容し新たな解釈が生まれる。
ここに、古典を読む意義があると感じています。
今回は、
今から50年前の1973年に発表された、John Lennonのアルバム「MIND GAMES」より、『Only People』を取り上げたいと思います。
Only people realize the power of people
(人だけが、人のもつ力を知っている)
これは、『Only People』の歌詞の一節です。
当時は、「納得のいかない社会や政治体制から人民に力を取り戻そう」という
背景の元に書かれた文章であると認識しています。
ただ、現在、この歌詞を読むと、当時とは異なった解釈ができると感じています。
社会や政治体制から、というよりは
「テクノロジーやAIの進歩から人民に力を取り戻そう」という文章として解釈することができると感じています。
本当にざっくりとですが、70年代はベトナム戦争に対する反戦活動や男女差別 / 黒人差別に対する抗議活動といったように、社会や政治に対するムーヴメントが大きかった時代であると認識しています。
そこでは、自分達の思いや考えはあるが、良くない社会や政治によってそれを反映できず、主体的に生きられていないことに対して不満があったのではないかと思います。
「自分達が主体となって生きている」という実感がもてなかった。
だからこそ、
Only people realize the power of people
(人だけが、人のもつ力を知っている)
人がひとりひとり持つ力を訴えて、団結して自分達こそが主役となって生きていこうと
呼びかけたのではないかと考えます。
では、現在はどのような時代であるか。
確かに、政治や社会に対する不満がないわけではないと思いますが、
70年代ほどに大きいとは思えません。
それよりも、ある種の虚無感が世界を包んでいる時代であると感じています。
本当に大きな不満があるわけでもないが、ただうっすらと日々が過ぎていくことに
少しの不安を感じる時代。
また、テクノロジーやAIの進歩によって、この虚無感は加速しているように思います。
便利になった (例えばAmazonやUberEats) 反面、自分自体は動くことが減少し、
自分が主体となって生きているという実感を得る機会は減っているように思います。
また、AIの進歩によって、自動的に好みの商品やサービスが供給され (例えば、Youtubeのオススメ動画やSNSなど)、一見便利になった反面、それは自分の主体性とは裏腹に
商品やサービスを「選ばされる」ような時代になったとも考えられます。
便利さがゆえに、ほとんどエネルギーを用いずに日々がただ過ぎてしまう。
技術の進歩にともなって、現代は70年代とは違った意味で、
「自分達が主体となって生きている」という実感がもてなくなっている時代ではないか
と考えます。
このような時代背景のもとで、
Only people realize the power of people
(人だけが、人のもつ力を知っている)
を読むと、便利なテクノロジーやAIに対抗して、もう一度生身の人間としての力を意識して自分達から主体的に楽しんで人生を送ろう、という文章としても解釈できるのではないかと思います。
外に出てお話をしてみたり、少しめんどくさいですが自炊をしてみたり。
そうした人間に根ざした活動を通して、
人の持つ力を取り戻す必要があるのではないか。
そう呼びかけているメッセージのように自分は解釈しました。